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【エンベデッドシステム試験に見る組込み技術の変遷】

2016年12月22日

 組込み技術(古くは計算機制御技術)そのものはそれほど新しいものではない。
実際、電力、鉄鋼、化学プラント分野では1960年代から計算機制御技術の導入が進んだ。ただ、その後実際に大きな変化が起きたのは、1975年前後のマイコン(○ マイクロコンピュータ、× 私のコンピュータ→PC)の登場からだ。

 この分野が独立して情報処理技術者試験に取り入れられたのは、遅れること20年、1996年のマイコン応用システム試験からであった。当初、情報処理技術者試験は、主として事務処理分野(EDP)を対象としており、プロコン分野(Process Control)の比重は少なかった。その後、マイコン応用試験の登場から2001年にテクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)を経て、2009年から現在のエンベデッドシステムスペシャリスト(ES)試験に至っている。

■マイコン応用システム試験の特徴 ⇔ 「マイコンの普及」

  • 主として電子機器対象
  • 組込みOS(リアルタイムOS)の直接的な使い方、システムマクロの仕様

■テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)試験の特徴 ⇔ 「ワンチップマイコン(注)の普及」

  • 試験の題材対象機器が拡大
  • 組込みOSの多様化に対応 ⇒ハイブリッドOS(リアルタイムOS+情報系OS)の出題もあった。
  • (注)ワンチップマイコン=MPU+メモリ、周辺回路など

■エンベデッドシステムスペシャリスト(ES)試験の特徴 ⇔ 「ワンチップマイコンがMCU、ECUと呼称も分化、専門化が進む」

  • 世の中の全ての組込み機器に対応(身近な電子機器から例えば貨物用ハイブリッド帆船まで) ⇒試験の題材は多様であり、受験者が従事している業務と直接関連があるのは稀だ。しかし、PWM制御、A/D、D/A変換など代表的な基本技術に関する出題は続いており、むしろ比重が増している。
  • 組込みOSの使い方、仕様(事実上、μITRONのサブセット)に関する出題はなくなった。 ⇒残るはメッセージシステム、排他制御、優先度制御など固有OSに依存しないものだけ。

■今後の変化と試験対応

  • ありきたりであるが、IoT化がさらに進む。今でもセンサ類の出題は多いが、もっとネットワーク化が進む? ⇒試験の題材では最先端的なものは出題されない。実用化が終わったものだけ

【試験対策として必要なもの】

  • 基本的な文章読解力(国語力)⇒最も重要であるが、一番難しい。真摯な担当業務への取組みとできる限りの多くの問題演習しかないか。
  • 高校1年生程度の数学力 ⇒例えば、三角関数、ピタゴラスの定理など
  • 速度・加速度、電力などの物理量の理解と計算力 ⇒微積分の計算は不要
  • ディジタル回路の基礎知識 ⇒アナログ回路はオペアンプの知識は最低限要
  • OS共通の初歩的知識 ⇒OS固有の知識は不要、特にリアルタイムOS固有の内容は、特に午後試験では出題されていない。午前試験では例えば周期タスクの問題などはある

 組込み分野を含むICT分野では、IoT/M2M、ビッグデータ、AIなどと脚光を浴びているが、エンベデッドスペシャリスト試験を受けようとされる技術者にとって最も重要なことは、恐らく1960年代から実用化されてきた基礎技術(例えば、PWM制御A/DD/A変換OS技術など)をしっかり修得することであろう。

 基礎技術と国語力を高められれば、技術者の未来は明るい。

moriki_yamamoto

執筆者『山本 森樹(やまもと もりき)氏』プロフィール

【経歴】
・静岡大学理学部物理学科卒。
・三菱電機株式会社にて,汎用機OS開発,データベースマシン,分散管理ソフトウェアなどの開発に従事。
・三菱電機を定年退職し,IT関連コンサルタントとして独立。現在は,基礎IT教育,基本ソフト関連の開発,データベース設計,エンベデッドシステム技術教育,開発コンサルティングなどに従事

【主な著書】
・「データ分析でデータ中心アプローチが実践できる本」(編著),オーム社,1996年
・「パソコンSQL絵とき基本用語」オーム社,1997年
・「モバイル・イントラネット絵とき基本用語」オーム社,1999年
・「基本ソフトウェア」アイテック,2007年
・「体系的に学ぶデータベースのしくみ 第2版」日経BPソフトプレス,2009年

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